「鶴寿千歳」は昭和天皇御即位の大礼を記念して作られた箏曲の舞踊だそうで、歴史的観点から興味深かった。いわゆる萬歳楽。賢帝が即位されると鳳凰が現れるそうだが、この曲では大臣と女御が雄鶴と雌鶴(松緑と時蔵)に姿を変えて萬歳楽を奏でるという趣向。
「絵本牛若丸」は七代目尾上丑之助の初舞台のための演目。寺島家のホームパーティに招かれた感の一幕。他愛もない見物だが、これもまた歌舞伎の一面。
「曽我綉俠御所染」は御所五郎蔵を松也、傾城皐月を梅枝、土右衛門を彦三郎など。松也はこういうまっすぐな役が似合うし、梅枝は好きな女方なので、嬉しい組み合わせ。黙阿弥の芝居には、筋なんかどうでもいいから七五調の歌うような台詞を聞く心地良さがある。その面では彦三郎の声が大きく通っていい感じだった。