隠居して毎日なにしてるんですかと訊かれると困って、「いろいろ」と答えていた。しかしこの頃になって、荒俣宏が「大都会隠居術」(光文社)で隠居とお化け(妖怪)の類似性を指摘していたことがあれこれ腑に落ちるようになり、「妖怪のような暮らし」とか「ゲゲゲの鬼太郎の主題歌のような毎日」と答えれば正しいと思うようになった。
誰でも人間や社会に愛想がつきて、お化けか妖怪のように暮らせればいいなあ、と思うことがある。なにせ、お化けにゃ学校も試験もないし、会社も仕事もないし、死なないし病気にもならない。朝は寝床でぐうぐうぐう、昼はのんびりお散歩だ。その究極の贅沢を「老い」という手段で実現するのが隠居である。
とは言え、私も夜は墓場で運動会をしているわけではない。