定理六七 自由の人は何についてよりも死について思惟することが最も少ない。そして彼の智恵は死についての省察ではなくて、生についての省察である。スピノザ「エチカ」(畠中尚志訳/岩波文庫)、第四部「人間の隷属あるいは感情の力について」より
証明 自由の人すなわち理性の指図のみに従って生活する人は、死に対する恐怖に支配されない(この部の定理六三により)。むしろ彼は直接に善を欲する(同定理の系により)。言いかえれば彼は(この部の定理二四により)自己自身の利益を求める原則に基づいて、行動し、生活し、自己の有を維持しようと欲する。したがって彼は何についてよりも死について思惟することが最も少なく、彼の智恵は生についての省察である。Q.E.D.