老人は、眼鏡を注意深く片方ずつ耳にかけた。「わしは、日々生き残るってことについては十分な知識を持っとる。世間でわしくらいその道の専門家はいないよ。それでどのくらい助かったことか。わしの人生、二語でいえるのだが、きみ、知りたいと思わんかい?」老人は胸のつぶれる思いで、もう一度棺を見下ろした。「二語でだぞ!」というなりダイアモンドはもう絶叫していた。「もう少しだ(Almost)! 終った(Over)! この二語のおかげで、わしは信じてもおらん神に日々感謝しとるのよ」『チャーリー・ヘラーの復讐』(R.リテル/北村太郎訳/新潮文庫)より