百歳にもなると、人間は愛や友情に頼らずにすむ。さまざまな災厄や不本意な死に怯えることもない。芸術や、哲学や、数学のいずれかに精進したり、独りでチェスの勝負を楽しんだりする。その気になったら自殺する。人間が己れの生のあるじならば、死についても同じである。
「疲れた男のユートピア」(J.L.ボルヘス著/鼓直訳)より

2017年9月9日土曜日

エアコンの水漏れ

この前、新調したばかりのエアコンの下に置いてあったペイパーバックが、ぐっしょり濡れて黴だらけになっていることに気付いた。知らないうちに、エアコンから水漏れしていたのである。慌てて業者に連絡をして、対応してもらった。

これが私にとっての、最近の大事件。あの人はお気楽だから人生の悩みと言ったら、花に虫がついて困るくらいのものだよね、と言われるような生活を理想としているのだが、また理想状態に戻った。「閑雅なる君のかなしみ苧環の花芽に繭ごもる蟲ありと」(塚本邦雄)。

ところで、自分でも調べたり、業者の方から聞いたりして、エアコンの排水の仕組みについて知ったことが面白かった。エアコンに冷房時用の排水管があることは知っていたが、まず、そんなに大量に排水しているものだとは思わなかった。しかし、日本の蒸し暑い夏の空気を冷やせば大量に水分が凝結し、それが適切に排水されないと、エアコン内にたまった水が盛大に零れ落ちてくるのは当然である。

また、排水の仕組みが単に重力任せだということも知らなかった。冷却器の下に受け皿があって、そこから配管の傾きで水を流し出すだけのシンプルな仕組みなのだ。だから、不具合の原因の特定や解消も簡単である。配水管の詰まりを取り除くための手動のポンプ(通販で安価に売っている)があれば大抵解決するし、エアコンのカバーさえ外せるなら素人でも 100% 問題を同定し解消できるな、と思った。とは言え、私なら業者を呼ぶが。

そんなわけで、被害にあったペイパーバックを陰干しして、何とか読めるようにならないかなあ、と期待している今日この頃。