百歳にもなると、人間は愛や友情に頼らずにすむ。さまざまな災厄や不本意な死に怯えることもない。芸術や、哲学や、数学のいずれかに精進したり、独りでチェスの勝負を楽しんだりする。その気になったら自殺する。人間が己れの生のあるじならば、死についても同じである。
「疲れた男のユートピア」(J.L.ボルヘス著/鼓直訳)より
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2020年1月27日月曜日

作品番号3「これはパイプではない」

第3作のテーマは「文字」の編み込み。マグリットの「イメージの裏切り」をデザイン化して、パイプの絵の部分を前身頃に、"Ceci n'est pas une pipe" の文章を袖に入れてみた。後身頃は無地だが、ベージュ、焦げ茶、黒、水色の横縞模様。毛糸は並太アクリル、6 色使用。特に気を使ったのは、文字フォントのデザイン。オリジナルの筆記体的な文字を粗い目でもなんとか再現することを目指した。

次は、もっと目を細かくして本格的な絵に見えるような編み込みに向かうか、もしくは、ほとんど無地でも丁寧に編んでセーターとしての品質向上を目指すか、どちらかを考えたい。

2019年6月20日木曜日

作品番号2「モンドリアン・ブギウギ」

第 2 作目は編み込みに挑戦してみた。デザインはモンドリアンの「ブロードウェイ・ブギウギ」(1943)を胸に編み込みで再現したもの。背中側にもコンポジション作品を入れようかとも思ったが、うるさい感じになりそうなので、デザイン案の段階で却下。制作期間は丁度二ヶ月。毛糸は並太アクリルで、6 色使用。

もとの「ブロードウェイ・ブギウギ」はほとんど縦横が等間隔の直線で描かれているように見えてあちこち微妙にずれている。そこで、絵のコピー画像の上に縦横に線を引いて色の場所を微調整してから、編み込みのデザイン画に起こした。

縦横に平行な線しかないので初めての編み込みに丁度良いかと思ったのだが、数目毎や時には一目毎に毛糸を変えるような箇所が非常に多くて難しい。結果、どう考えても素人向きではないデザインだとすぐに悟ったが、編み始めてしまった以上、最後まで一応はやり遂げた。

そのおかげかどうか、並太の毛糸で編める程度の編み込みなら大抵のものはできそう、という自信を得た。おそらく次回は、この半分くらいの細い毛糸で、もっと繊細なデザインに挑戦したい。絵柄としては和風がいいかな。

2019年4月19日金曜日

作品番号1「ミルクチョコレート」

橋本治が亡くなったのをきっかけに、『男の編み物 橋本治の手トリ足トリ』(河出書房新社)を引っ張り出し、追悼の意味でセーターを編んでみた。丁度、一ヶ月で完成。昔一度この本で編み始めて途中で挫折したのだが、今回、生まれて初めてセーターを最後まで編み上げた。

初めて作るセーターは「極めて前衛的」になりがちなので地味な色を選ぶように、との同書のアドバイスを受け、焦げ茶色とベージュで「ミルクチョコレート」をイメージして編んでみた。あちこち目が抜けていたり、からんでいたりするし、手でこねくりまわしているので出来た時点で既にヨレヨレになっていたり。
















しかし、一通りの工程を最後まで編んだことで「理屈はわかった」感。「着てみて、満足するなり首をひねるなりを、思う存分にやってみてください。良きにつけ、悪しきにつけ、それこそが、あなたの編んだセーターなのです」(同書より)。

編み物の「理屈」の他にも、どこは手を抜いていいか、どこはきっちりやらなくていけないかの勘所も少しわかった。どうせ初めてだしと思って、型紙は定規すら使わず随分いいかげんに作ったのだが、出来上がりは自分のサイズにぴったり。編み込みなどのデザインがなければ、これで十分かも。

一方で、「はぎあわせ」や「とじつけ」は 10 目程度ずつの狭い間隔で目印の仮縫いをしておかないと、仕上りが無惨やな、になる。この「はぎあわせ」など、編んだものをくっつける工程は技術的にも難易度が高いし、仕上りの美しさを左右する。

あとは、やはり編みもののほぼ全体を占めるメリヤス編みの目の綺麗さ。これは、力を抜いてすいすい編むことで、ようやく目が揃ってくるので、慣れと訓練あるのみ。一着縫い終わる頃になって、ようやく力が抜けてきたかな、という感じ。

一着編んでみると、編み物はなかなか楽しい。色んな工程があるし、日々少しずつ出来上がっていくのもいいし、完成すると充実感がある。楽に編めるようになってきたことだし、次はデザインの楽しさも追加して編み込みに挑戦してみようと思っている。