百歳にもなると、人間は愛や友情に頼らずにすむ。さまざまな災厄や不本意な死に怯えることもない。芸術や、哲学や、数学のいずれかに精進したり、独りでチェスの勝負を楽しんだりする。その気になったら自殺する。人間が己れの生のあるじならば、死についても同じである。
「疲れた男のユートピア」(J.L.ボルヘス著/鼓直訳)より

2017年10月12日木曜日

二つの人生

私たちには誰でも二つの人生がある。
真の人生は、子供のころ夢見ていたもの。
大人になっても、霧の中で見つづけているもの。
偽の人生は、他の人びとと共有するもの。
実用生活、役に立つ暮らし。
棺桶の中で終わる生。
フェルナンド・ペソア「[新編] 不穏の書、断章」 (澤田直訳/平凡社ライブラリー)より