百歳にもなると、人間は愛や友情に頼らずにすむ。さまざまな災厄や不本意な死に怯えることもない。芸術や、哲学や、数学のいずれかに精進したり、独りでチェスの勝負を楽しんだりする。その気になったら自殺する。人間が己れの生のあるじならば、死についても同じである。
「疲れた男のユートピア」(J.L.ボルヘス著/鼓直訳)より

2018年4月13日金曜日

メグレ警視とデュマ

病気のとき、メグレはアレクサンドル・デュマの小説に読み耽るのが習慣だった。そのため、黄色い頁にロマンチックなさし絵の入った古い廉価版のデュマ全集をもっていた。これらの本が発散する匂いは、なににもまして、メグレに、これまでかかったあらゆる軽い病気のことを思い起こさせるのだ。……
「メグレと殺人者たち」(G.シムノン著/長島良三訳/河出文庫)より