百歳にもなると、人間は愛や友情に頼らずにすむ。さまざまな災厄や不本意な死に怯えることもない。芸術や、哲学や、数学のいずれかに精進したり、独りでチェスの勝負を楽しんだりする。その気になったら自殺する。人間が己れの生のあるじならば、死についても同じである。
「疲れた男のユートピア」(J.L.ボルヘス著/鼓直訳)より

2019年3月31日日曜日

「人類」についての現在の見通し

現在、種としての人類は発狂しており、精神的自制ほどわれわれに急を要するものはないといったとしても、ほとんど誇張ではない。もしある個人が、その指導理念において、自己や他人にとって危険となるほど、彼の環境に不適応な状態になっているとすれば、われわれは彼を狂気と呼ぶ。この狂気の定義は、現在における全人類にあてはまるように思われるが、(……)
『世界史概観』(H.G.ウェルズ著/長谷川文雄・阿部知二訳/岩波新書)、第70章「『人類』についての現在の見通し」より