百歳にもなると、人間は愛や友情に頼らずにすむ。さまざまな災厄や不本意な死に怯えることもない。芸術や、哲学や、数学のいずれかに精進したり、独りでチェスの勝負を楽しんだりする。その気になったら自殺する。人間が己れの生のあるじならば、死についても同じである。
「疲れた男のユートピア」(J.L.ボルヘス著/鼓直訳)より

2017年4月19日水曜日

林類歳且ニ百歳ナラントス

子貢曰く、先生少(わか)くして行を勤めず、長じて時に競わず、老いて妻子なく、死期将に至らんとす。亦何の楽があって、穂を拾うて行〻歌うやと。林類笑って曰く、吾が楽となす所以のものは、人皆之あれども、反って以て憂とするなり。少くして行を勤めず、長じて時に競わず、故に能く寿きこと此くの若し。老いて妻子なく、死期当に至らんとす、故に能く楽しむこと此くの如し。

「列子」(小林勝人訳注/岩波文庫)、「天瑞第一」より