百歳にもなると、人間は愛や友情に頼らずにすむ。さまざまな災厄や不本意な死に怯えることもない。芸術や、哲学や、数学のいずれかに精進したり、独りでチェスの勝負を楽しんだりする。その気になったら自殺する。人間が己れの生のあるじならば、死についても同じである。
「疲れた男のユートピア」(J.L.ボルヘス著/鼓直訳)より

2018年6月12日火曜日

幸福を感じること

また、それ(幸福)が不完全なのは幸福を感じる者が悪いので、幸福を与える者のせいではないのだけれども、アルベルチーヌはまだそんなことに気がつかない年齢だったから(その年齢を越えられない人たちもいるものだ)、……
「失われた時を求めて」(M. プルースト著/鈴木道彦訳/集英社文庫)、第 8 巻(第四篇「ソドムとゴモラ II」)より