百歳にもなると、人間は愛や友情に頼らずにすむ。さまざまな災厄や不本意な死に怯えることもない。芸術や、哲学や、数学のいずれかに精進したり、独りでチェスの勝負を楽しんだりする。その気になったら自殺する。人間が己れの生のあるじならば、死についても同じである。
「疲れた男のユートピア」(J.L.ボルヘス著/鼓直訳)より

2018年8月1日水曜日

若さの幻想

以前から私は、仕事をしたい、失われた時をとりもどしたい、生活を変えたい、というよりむしろ本当の生活を始めたい、と考えていたが、そうした気持が続いているために、自分が以前と同じように若いのだという幻想を持っていた。
「失われた時を求めて」(M. プルースト著/鈴木道彦訳/集英社文庫)、第 11 巻(第六篇「逃げ去る女」)より