百歳にもなると、人間は愛や友情に頼らずにすむ。さまざまな災厄や不本意な死に怯えることもない。芸術や、哲学や、数学のいずれかに精進したり、独りでチェスの勝負を楽しんだりする。その気になったら自殺する。人間が己れの生のあるじならば、死についても同じである。
「疲れた男のユートピア」(J.L.ボルヘス著/鼓直訳)より

2017年7月17日月曜日

三連休

三連休、と言っても隠居の身には毎日が祝日みたいなものなので、人出にぶつからないように家でおとなしくしている以上の意味はない。特に最近は猛暑らしいので、外に出ないに越したことはない。

そんなわけで、この三日間はずっと校正作業と、その合間の SF 小説読書に集中。自分の本(数学の教科書)は再校を締切より数日早く仕上げ、SF 小説は「ハイペリオン」(D.シモンズ著/酒井昭伸訳/ハヤカワ文庫)と「ユービック」(P.K.ディック著/浅倉久志訳/ハヤカワ文庫)を読んだ。

「ハイペリオン」はエンタテイメントとしてはすごく面白いのだが、SF と言うよりは SF 的設定を舞台にした娯楽作品の感。そして、盛り上げに盛り上げて、さあここから、というところで「以下は次号を乞うご期待」。次作を含めての二部作、もしくは、さらに次の二部作を含めての四部作で完結するらしい。「ユービック」は、また別の意味で、SF と言えるのかどうか…… SF のような、ミステリのような、ハチャメチャのような、精緻絶妙なような、破綻しまくりのような、兎に角、変な作品。身の周りのものが、見る見るうちにテレビが真空管ラジオになり、自動車はクラシックカーになり、と先祖帰りしていき、それを食い止められるのは、現実補強スプレー「ユービック」。なんて、もうほとんど落語では。