百歳にもなると、人間は愛や友情に頼らずにすむ。さまざまな災厄や不本意な死に怯えることもない。芸術や、哲学や、数学のいずれかに精進したり、独りでチェスの勝負を楽しんだりする。その気になったら自殺する。人間が己れの生のあるじならば、死についても同じである。
「疲れた男のユートピア」(J.L.ボルヘス著/鼓直訳)より

2017年12月28日木曜日

年の瀬の神保町

今年最後の神保町散歩。黒ビール半パイントを飲みながら一年の一人反省会をしてのち、行き付けの古書店を巡る。

ディック・フランシスの長編を集め始めてからずいぶん長いのだが、最後の最後まで入手できなかった二冊、「追込」と「決着」(菊池光訳/ハヤカワ文庫)の両方ともを、百円均一棚と同店内で見つける。もちろん、こういう一般書、業界用語で言えば「白っぽい本」は、今では amazon でいくつかクリックすれば直ちに入手できるのだが、散歩の途中の古書店で出会うのが楽しいのである。こんな文庫本を見つけただけで、ああ来年は良い年になりそうだなあ……なんて馬鹿なことを思えるのだから。

そのあと、これまた行き付けの珈琲屋で一服して、反省会の続きをしたり、買った本をほくほくしながら眺めたりしてから、帰路につく。